平成30年度税制改正の特例で、通常土地の相続登記の登録免許税として固定資産税評価額×0.4%(1千万円の評価で4万円)かかるが、特定のケースの場合、土地の相続登記に対する登録免許税の免税措置が創設されました。
登記未了不動産対策の一環ですね。
相続により土地を取得した方が相続登記をしないで死亡した場合の登録免許税の免税措置
個人が相続(相続人に対する遺贈も含みます。)により土地の所有権を取得した場合において,当該個人が当該相続による当該土地の所有権の移転の登記を受ける前に死亡したときは,平成30年4月1日から平成33年(2021年)3月31日までの間に当該個人を当該土地の所有権の登記名義人とするために受ける登記については,登録免許税を課さないこととされました。
具体的には、被相続人Aの土地を、相続人Bが相続し、その相続登記をしないまま相続人Bが死亡した場合に、相続人Bを土地の所有者(登記名義人)とする場合の相続登記の登録免許税(※)が免除されるということです。
(※)登録免許税は、登記申請時の申請書に貼付する印紙代のことで、不動産評価額の1000分の4(1千万円で4万円)
被相続人Aの土地を、生存している相続人Bが相続登記するような通常の場合は使えません。
また、上記の例のように、被相続人Aの土地を、相続人Bが相続、その相続登記をしないまま相続人Bが死亡し、その相続人C名義に相続登記をするという場合も適用外です。
被相続人A~相続人B(死亡)~相続人Cのケースでは、本来は、
1.被相続人Aから相続人B(死亡)への相続による所有権移転登記(1次相続)
2.相続人B(死亡)から相続人Cへの相続による所有権移転登記(2次相続)
とすべきですが、実務上は、現存相続人(被相続人A、相続人B(死亡)の相続人)全員の遺産分割協議で、被相続人Aから相続人Cへ直接相続登記をすることができるので、上記1の登記の登録免許税がいらないからといって1の登記をするメリットはありません。
使用するケースとしては、相続人B(死亡)が生存中に売却した場合、いったんBの名義にする必要があるので、その場合の相続の登録免許税は免税となります。
他、超実務的ですが、時効取得の登記をする前提の相続登記にも使えそうです。
あと、上記1の1次相続の段階で、相続人が死亡している方と、死亡していない方との共有の場合はどうなるでしょうか。
この場合も非課税の適用はありますが、死亡した人が相続する共有持分についてのみ適用があることになります。
相続登記の登録免許税の免税を受けるには、申請書に「租税特別措置法第84条の2の3第1項により非課税」と記載すること
登記申請書に「租税特別措置法第84条の2の3第1項により非課税」と記載しないと相続登記の登録免許税が非課税となりません。(※)
免税を受けるための登記申請書例
登記申請書
登記の目的 所有権移転
原因 平成2年2月1日相続
相続人
(被相続人 法務太郎)
○○郡○○町○○34番地 (亡)法務一郎
申請人・上記相続人
○○市○○町二丁目12番地 法務花子
代理人
高知県四万十市中村東町2丁目6番4号
小谷 龍司(印)
連絡先の電話番号 0880-34-3822
添付情報
登記原因証明情報 住所証明情報 代理権限証書
平成30年4月1日申請 高知地方法務局四万十支局
登録免許税 租税特別措置法第84条の2の3第1項により非課税←●(※)この記載が必須
不動産の表示
不動産番号 1234567890123
所在 ○○市○○町一丁目
地番 23番
地目 宅地
地積 123・45平方メートル
法務省民二第168号
平成30年3月31日
法務局民事行政部長 殿
地方法務局長 殿
法務省民事局民事第二課長(公印省略)
租税特別措置法第84条の2の3第1項の規定の施行等に伴う不動産登記事務の取扱いについて(通知)
所得税法等の一部を改正する法律(平成30年法律第7号。以下「改正法」という。)が本年4月1日から施行され、改正法により新設される租税特別措置法(昭和32年法律第26号。以下「法」という。)第84条の2の3第1項の規定も同日から施行されますが、これに伴う不動産登記事務の取扱いについては、下記の事項に留意するよう、貴官下登記官に周知方取り計らい願います。
記
第1 背景
相続登記が未了のまま放置されることは、いわゆる所有者不明土地問題を生じさせる大きな要因の一つであるとされ、法務省では、相続登記を促す広報用リーフレットの作成や法定相続情報証明制度の創設など、相続登記の促進のための各種の施策を進めているところである。
一方で、相続登記が未了のまま放置されることの理由の一つとしては、手続にかかる費用の負担が挙げられており、例えば登録免許税の減免措置といった費用負担の軽減を図るべきとの指摘もある。
法務省では、これらの状況に鑑み、平成30年度税制改正要望として、相続登記を促進するために、相続登記に係る登録免許税について特別措置を設けることを要望してきたところである。
この要望については、平成29年12月22日に閣議決定された平成30年度税制改正の大網に「土地の相続登記に対する登録免許税の免税措置の創設」として盛り込まれ、今般の免税措置の創設に至ったものである。
第2 相続に係る所有権の移転登記の免税措置(法第84条の2の3第1項関係)
個人が相続(相続人に対する遺贈を含む。以下同じ。)により土地の所有権を取得した場合において、当該個人が当該相続による当該土地の所有権の移転の登記を受ける前に死亡したときは、平成30年4月1日から平成33年3月31日までの間に当該個人を当該土地の所有権の登記名義人とするために受ける登記については、登録免許税を課さないこととされた(法第84条の2の3第1項。)
1 個人が相続により土地の所有権を取得した場合において、当該個人が当該相続による当該土地の所有権の移転の登記を受ける前に死亡したときについて
今回の措置は、いわゆる数次相続が生じていることを主に想定したものであるが、ここでいう「個人が相続により土地の所有権を取得した場合において、当該個人が当該相続による当該土地の所有権の移転の登記を受ける前に死亡したとき」とは、登記名義人である被相続人Aから相続人Bが相続により土地の所有権を取得した場合において、相続人Bが被相続人Aからの相続による土地の所有権の移転の登記を受ける前に死亡したときをいう。
したがって、当該土地の所有権が相続人Bの死亡による相続を原因としてBの相続人(例えばBの子など)に更に移転していることまでを要件とするものではない。
すなわち、例えば、当該土地について相続人Bが生存している間に相続人Bから第三者に売買等がされていたとしても、それをもって法第84条の2の3の第1項の適用外となるものではない。
2 当該個人を当該土地の所有権の登記名義人とするために受ける登記のついて
「当該個人を当該土地の所有権の登記名義人とするために受ける登記」とは、死亡した相続人Bを当該土地の所有権の登記名義人とするために受ける、被相続人Aからの相続による土地の所有権の移転の登記をいう。
また、例えば、相続人Bに、存命する同順位の相続人が存在し、当該土地が当該同順位の相続人と相続人Bとの共有により相続されている場合には、「当該個人を当該土地の所有権の登記名義人とするために受ける登記」として法第84条の2の3第1項の適用により免税措置を受ける範囲は、相続人Bが所有権の移転を受ける持分に相当する部分となる。
3 登記の申請情報の記載について
法第84条の2の3第1項の適用を受けようとするときの申請情報の記載は、例えば、登録免許税の欄に「租税特別措置法(又は昭和32年法律第26号)第84条の2の3第1項により非課税(あるいは、一部非課税)」などとする。
4 免税措置の適用を受ける際の証明書類について
上記3に従って法第84条の2の3第1項の適用を受けようとする土地の相続による所有権の移転の登記の申請があった場合には、同項の適用の有無は、原則として、当該申請において提供される、相続を証する市町村長その他の公務員が職務上作成した情報(不動産登記令(平成16年政令第379号)別表22の項添付情報欄)から明らかとなるため、法第84条の2の3第1項の適用を受けるための特段の証明種類は要しない。
第3 その他(法第84条の2の3第2項関係)
個人が、所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法の施行の日から平成33年3月31日までの間に、土地について相続による所有権の移転の登記を受ける場合において、当該土地が相続による土地の所有権の移転の登記の促進を特に図る必要があるものとして政令で定めるものであり、かつ、当該土地の当該登記に係る登録免許税法(昭和42年法律第35号)第10条第1項の課税標準たる不動産の価額が10万円以下であるときは、当該土地の相続による所有権の移転の登記については、登録免許税を課さないこととされた(法第84条の2の3第2項)。
また、この政令で定めるものとは、都市計画法(昭和43年法律第100号)第7条第1項に規定する市街化区域内に所在する土地以外の土地のうち所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法第3条第1項に規定する基本方針に定める同条第2項第4号に掲げる事項に基づいて市町村の行政目的のため相続による土地の所有権の移転の登記の促進を特に図る必要があるものとして法務大臣が指定するものとされるとともに、この指定をしたときは、告示をすることとされた(租税特別措置法施行令(昭和32年政令第43号)第44条の2)。
法第84条の2の3第2項の規定の施行の日は、所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法の施行の日とされている(改正法附則第1条第20号)ところ、同法案は、国会で審議中であるため、法第84条の2の3第2項に関する不動産登記事務の取扱いについては、同法案の成立後に別途通知する。
(※)
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